12歳のとき、人生終わったと思った。
たかが学校に行けなくなった。それだけのことで。
その時は「行かない」だと思っていたけれど、
今は「行けない」だったと思っている。
今の私なら絶対行くけど。その時の自分には仕方なかった。
小学校の高学年は休みがちで、最後のほうはほとんど行かなくて、
卒業式もサボった(親に泣かれた)。
中学校はほんの数回しか行かなかった。
義務教育すらろくにこなせない自分は高校も行けない(だろう)し
大学も行けない(だろう)し、
そんなら当然ろくな仕事にも就けないに決まっている(だろう)から
まともに生きていくなんてできない(だろう)。
もう無理だ。人生終わった、とそう思っていた。
たかが12年で。
順調に中高大と進み「みんな」と同じ年齢で卒業、
すかさず就職しなければまともに生きるなんてできないし
「まとも」以外の道なんてないし
一度コースから外れれば戻ることなんて不可能だと思った。
中学全部を休みつくして外に出た後も、
常にもう手遅れだと思いながら生きてきた。
それはもちろん私が無知で頭が固くて
極端に狭い世界に住んでいたからこその発想ではあるのだけれど、
子どもにそう思わせてしまう社会ってどうなんだろう。
現実だってかなり12歳の私の「思い込み」に近いけれど、
そうじゃない世界だってある。
そんなこと気づかなかった。
「ふつう」と違うことをして生きていけるのは、
強いか賢いか強運な人だけで、私はそのどれにもなれないと思った。
そう思ってしまったのは私の愚かさだけが原因でもないと思う。
やり直せるという情報が極端に少ない。
フリーターになったら正社員になれないよとか、
でかい会社は新卒か経験者しか雇ってくれないよとか、
正社員じゃなきゃ結婚もできないよとか、
だから最初からまともな道を歩みなさいとか、
そんな情報は幾らでも振ってくるけれど。
人生いつでもやり直せるよとかいう抽象的な言葉なら幾らでもあるけれど。
私は「まともになる予定」で生きていたからそうなった。
会社員と主婦と子ども(複数)とマイホームと学資保険のセットが標準仕様
(非行だの中退だの離婚だのなんて論外)だと思っていたから、
ドロップアウトに怯えた。
高学歴で一族みんな医者とかいう家庭で育てば
幼稚園受験の失敗だけで人生が終わったと思うのかもしれないし、
逆に知り合いはみんな中卒ヤンキーで
日雇いか生活保護世帯ばかりという家庭で育てば、
最初から「まとも」なホワイトカラー生活は
自分とは縁のないものと思うのかもしれない。
もちろん全てがそうではないけれど、生き方や生活設計は
うまれた環境やもらった希望に影響される。
「死ぬ気で頑張れば変えられる」って言ったって、
ニートだの不登校だの一部のフリーターだのは
大抵「頑張れない駄目な自分」というセルフイメージに
骨の髄まで侵されているんだから、
「頑張れないから自分は駄目だ」
「死ぬ気で頑張れるくらいならとっくにどうにかなっている」
「死ぬ気になれるくらいなら死ねる」と考える。
そんなこと言われたくらいでどうにかできる人は、
はなからこもらないし自力で外に出る。
多分、多くは「頑張る」に至るまでの段階ですで怯えている。
こんな自分がまともにやっていけるはずがないとか、
もういい年(ハタチやそこら)なのに何もできないとか。
そうやって怯えるうちに本当にいい年になってしまう。
「他人に迷惑をかけてはいけません」を内面化すればさらに完璧。
『こんな自分が外に出たら他人に迷惑をかけてしまう。
だから完璧にちゃんとしよう。でもできない。外には出られない』
社会復帰しようとするひきこもりにとって、
恐ろしいのは履歴書の空白期間。
自分の無能さや経験のなさや対人スキルのなさもさることながら、
この真っ白な履歴書を提出するなんて無謀じゃないか?
聞かれたなんと答えればよいのか?
嘘をつくのは気が引けるが本当のことを話しては不採用だろう、
などなど。
対人恐怖や不安傾向の強い人にはまずそこが大きなハードルになる。
実際に出す前に出していいのかが不安になる。
この白さが恥ずかしい、みっともない、どう思われるのか
という自分の気持ちのハードルを乗り越えたところで、
実際にハネられる。ハネられたことで更に手遅れ感がつのる。
空白期間の長い人、不安の強い人、人と話せない人。
こんなの私だって雇いたくない。
だけどどこにも居場所がないから、ますます空白期間は長くなる。
空白期間が長くなれば、恐怖や思い込みはエスカレートする。
大事なのは今より過去。未来より今。
過去が駄目なら未来も駄目なはず。
そう評価されることが多いし、
評価される前に誰より自分がそう思ってしまう。
実績を見て可能性を評価するのは当然のことだけど、
それしかないと思わされてしまう。
「今までなにをしてきたの?」
「なにもしてません」
だからこれからしたいんです。
だけど自信がないんです。
再チャレンジなんていう口当たりのいい言葉を信じられない。
思い切りグレたあとに猛勉強して弁護士や教師になるような
「すごい人」は本やテレビの中にいても、
常人並みの努力で生き方を変えて生活している人が身近にいない。
それじゃあドロップアウトしても生きていけるとは思えない。
超人的な努力をしなければ抜け出せない、まともじゃなきゃ生きられない。
自分はそこまでできそうにない。
希望がないと動けない。