2006年05月26日

「ニートは扶養控除の対象外」自民党税制調査会が検討

ニートは扶養控除の対象外(共同通信)
 自民党税制調査会(柳沢伯夫会長)は21日、少子化対策としての子育て支援減税の財源を確保するため、所得税の扶養控除(1人当たり38万円)に年齢制限を新設し、成人したニート、フリーターを対象から外す方向で検討に入った。現行制度は成人した子どもが経済的に自立しないまま親が生活費を負担しているケースも控除対象となっているため「子育ての負担軽減という趣旨から外れる」と判断。 
[共同通信:2006年05月22日07時40分]


この人たち、「ニート」っていう言葉を知っているだけで、
ニート関連の本を読んだり
現在なされている支援内容を調べたりはしてないんだろうな。

これ、通ったらそれなりに効果はあると思います。

・家庭内暴力促進
・無理心中(親殺し、子殺し)の促進
・ひきこもり高齢化問題の拡大

などに効果的。

なにゆえ上記の現象に効果的かといえば、
それで働くようになる人がいるとは
(少なくとも大部分のニートが働くようになるとは)思えないからです。

まず1点目、家庭内暴力促進。
「親が養うから子どもが(註、年齢ではなく関係の中での「子ども」です)
ひきこもりやニートなんてものをしていられる」
という意見は正しい。
しかし扶養控除から外せば親が養わなくなるかといえば、そんなことはない。
追い出せる親ならとっくに追い出してます。
生活保護を受けているひきこもり家庭だってあるんですから。

負担がある程度増えても追い出す親はそれほど増えない。
しかし子供を責める言葉は増えるでしょう。

「なぜ働かない」とか「働け」とか「ごくつぶし」とか。

家庭内暴力のあるひきこもりの場合、
暴力のきっかけになるのは家族のなにげない一言が多いそうです。
「同級生の○○さんは就職したらしいよ(なのにオマエはひきこもっている)」
「障害に負けずがんばっている人をみた(オマエは健康なのにがんばっていない)」
などなど。
親が世間話のつもりで話した言葉に、カッコ内の責めを聞いてしまう。
なぜなら常に自分が思っていることだから。


扶養控除がなくなって負担が増えたら、
暴力のきっかけになるセリフが増えてしまうんじゃないだろうか。

もちろん暴力はいけませんよ。
でもとりあえず倫理はおいておいて、暴力をふるうことが何を残すか考えてみましょう。
暴力をふるってすっきりするか?しません。
精神的に疲労して、ますます外に出て働く力をそがれます。


実は子どもは「親を殴ってはいけないが、どうしても殴ってしまう。だから、殴った自分はいけない子だ」と思っているのです。親を殴ることで子どもは罪悪感にさいなまれるのです。だから、子どもが暴力をふるったら逃げなきゃいけないわけです。殴らせてはいけないのです。

  西山明 信田さよ子 『家族再生』  小学館


そして2点目。無理心中(親殺し、子殺し)の促進。
上記のように暴力が増えると、中には
「こんな風に育ててしまったのは親の責任。
だから人様にご迷惑をかけないように、責任をもって子供を殺して自分も死ぬ」

なんていう責任を履き違えた親も出てくるでしょう。

あるいは
「親もそろそろ定年なのに自分はいい年をして働いたことも無い。
将来はどうなるのか。自分は親を養うこともできない。
不憫だから親を殺して自分も死のう」

なんていう悲観した子どももでてくるでしょう。

最後に3点目。ひきこもり高齢化問題の拡大。
現在、ひきこもり人口は拡大しつづけています。
なぜなら、支援なしにひきこもりから抜け出すことは難しいからです。
抜け出す人が少ないにもかかわらず、新規参入は増えている。
その上、年をとれば就職も難しくなるけれど、支援は始まったばかりです。

つまり、最初期のひきこもりたちは抜け出せないまま年を重ねているわけです。
30代40代なんてもんじゃありません。
一度も働かないまま年金受給年齢に達するひきこもりが
現れ始める日も近いと言われています。


さて、ひきこもりとニートは違います
(ひきこもりはニートに含まれますが、ニートの全てがひきこもりではありません)が、
働かない(→養われる対象=負担)という点において、行政的には同じでしょう。

このまま月日が流れれば、
現在ひきこもり高齢化問題として語られ始めているのと同じことが、
ニートにもおこるわけです。
つまり、一生働かない人たちの出現です。

働かないから年金は払えません。
でも、親が払っているかもしれない。
生活保護を受けるかもしれない。
結局税金はかかるんです


親がそこまで面倒を見ない(見られない)としても、
長い間放っておかれたひきこもりが働き始めることは容易ではありません。

働くより餓死を選ぶ、選ばざるをえない。
それがひきこもりです。


(もちろん、そうではない人もいます。
しかし長期に及ぶひきこもりの末に働き出すことは
受け入れ先を探すだけでも大変なことです)

本当に楽観的にニートやってる人って少ないです。
社会性がとぼしいゆえに働けないって調査もでました。

そんな人が働けるようになるために必要なのは、
叱咤ではなく働くために必要なスキル
(対人スキルや生活習慣、一定以上の年齢なら職業的な技能も)です。


「甘やかすからいけない、突き放せば働く」なんて考えは楽観的にすぎます。
受け入れ先や支援者がある状況で、本人を突き放すのは効果的かもしれません。
しかし受け皿もないのに社会からひきこもり家庭を突き放すことは、
「働ける人口を増やす」という点からいえば逆効果
です。

ニートのいる家庭にとってだけでなく、社会全体にとっても
「扶養控除対象を減らす(税金の使い道を減らす)」より、
「働ける人口を増やす(納税者を増やす)」
ほうが、
長期的にみればメリットが大きいはずです。


⇒サイト内関連リンク
読売新聞調査「ニートの6割、部活未経験」



信田 さよ子,西山 明
Amazonランキング:483072位
Amazonおすすめ度:

posted by ヒギリ at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・気になること | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
タグクラウド
Aセク Aセクシャル BL CM DV GID goo IDAHO IS LGBT MINMI NHK Roots sad TLGP UFO X−MEN あるある いじめ うさぎ おしゃれ おやつ お勧め こんにゃくゼリー しつけ ひきこもり まゆ もったいない もとはしさとこ ものづくり やっかみ やり直し やる気 アイデンティティ アカー アセクシャル アトピー アニメ アメリカ アルバイト アンパンマン アン・スモーリン アート イギリス イタリア イベント イラン インターネット インド インナーチャイルド インフルエンザ ウサビッチ エイズ エドワード・ゴーリー カップル思想 カムアウト キャロル・オフ クィア クローズアップ現代 ケア ゲイ ゲーム コミュニケーション ゴーリー サポート システム ジェンダー ジャッキー・ケイ ジョン・ガイナン スキヤキウエスタン スパム スポーツ セクシャルマイノリティ セクシュアリティ セクマイ読み タイトル評 テレビ ディロン トーベ・ヤンソン ドキュメンタリー ドラマ ナショナリズム ニューカマー ニュース ニート ネット ネット広告 バイセクシャル バッシング バリアフリー パウロ・コエーリョ パレード パワーハラスメント ビッグイシュー ピーコ ファクタ ファンタジー ファン心理 フィルタリング フェミニズム フリーター ブクログ ブラ男 ブログ ブログ村 プライド ヘテロセクシズム ヘテロセクシャル ペット ホモソーシャル ホモフォビア ホワイトカラー・エグゼンプション ボランティア ポジティブ マイノリティ マジョリティ マスコミ マタニティマーク マナー マナー向上員 ママ ムーミン メディア メディアリテラシー メンタル モラル ラジオドラマ ラベリング リテラシー レインツリーの国 レゲエ レベッカ・ブラウン 三森ゆりか 三谷幸喜 上野動物園 上野千鶴子 下着 不妊 不安 不幸 不正採用 不況 不登校 世代 中学校 中村文則 事件 事故 二丁目 二千円札 二次加害 京極堂 京極夏彦 仕事 体罰 倉敷市 倉本智明 倫理 偏見 健常 健康食品 優先席 優生思想 児童 児童書 入管法 全盲 写真 写真集 冤罪 出産 制服 動機付け 動物 北朝鮮 北海道 卒業 厚生労働相 原因論 原爆 参院選 友人 可愛い 吉永みち子 同性愛 名づけ 名付け 名前 君が代 和歌 和歌山県 和田秀樹 図書館 国旗 国連安保理 地下鉄 地域 地震のこと 報道 売春防止法 売防法 外国人 夢判断 大人 大分 大学生 大統領選 大阪 夫婦 女性 姑獲鳥 婚姻 子ども 子供 子宮頸がん 子持ち 子無し 子育て 学校 学生 安倍晋三 安全 安心 宗教 定時制 宮城県 宮沢賢治 家事スキル 家庭 家庭科 家族 寓話 対処 対話 小中学校 小学校 小説 少子化 少年犯罪 少数派 就労 尾辻かな子 島村洋子 島根県警 工藤定次 差別 差別用語 希望格差 常識 平野広朗 幸せ 府中青年の家 引きこもり 弱者 弱視 心理 心理学 思い込み 性善説 性教育 性暴力 性犯罪 性的指向 恋愛 恋愛至上主義 情報 愛情 感動 感情 慣れ 我慢 戦争 戸籍 手引き 批判 投票 拷問 携帯電話 摂食障害 支援 政治 政策 教員 教職 教育 教育再生会議 教育再生懇談会 教育委員会 整理 斉藤環 新潟 新聞 日本の、これから 日本テレビ 映画 普通 景気 暴力 暴言 書評 月経 有川浩 服装 未婚 本多孝好 本能論 札幌 朴裕河 村上龍 条例 東京プライドパレード 東京都 東北農政局 松森果梨 柳沢伯夫 格差 桐野夏生 梨木香歩 森永アロエヨーグルト 権利 横浜市 欲求 正義 歩行 死刑 民主党 洋画 活字中毒 浜崎あゆみ 清水尚 熟年 父親 特報首都圏 犯罪 猿橋賞 珍名 理解 生徒 生活保護 生理 生理的 男性 町村官房長官 異性愛 異性愛至上主義 痴漢 発達障害 百合 盲導犬 知る権利 短編集 砂川秀樹 社会 社会不安障害 神戸市 福祉 税制 童謡 笑い 管理 紅白歌合戦 経済 結婚 結婚式 絵本 練馬区 署名 美学 義務 義務教育 義家弘介 聴覚障害 職場環境 育児 脳内メーカー 自分探し 自己肯定感 自死 自死遺族 自殺 自閉症 芳賀優子 芸能 芸術 若者 薬物 虐待 行事 行政 表現 裁判 西村賢太 規制 規範 視覚障害 視覚障害者との接し方 親切 親子 言葉 訃報 詐欺 評価 読売新聞 読書 貧乏性 責任 足立区 農業 遊び 運動 道徳 遥洋子 選挙 邦画 都城市 配慮 野球 障害 集団 雑誌 難聴 電車 非行 韓国 音声信号 音楽 飲酒 飲酒運転 餓死 駅員 駒尺喜美 騒音 高校 高校生 高楼方子 鳩山法相 DHC