ニートは扶養控除の対象外(共同通信)
自民党税制調査会(柳沢伯夫会長)は21日、少子化対策としての子育て支援減税の財源を確保するため、所得税の扶養控除(1人当たり38万円)に年齢制限を新設し、成人したニート、フリーターを対象から外す方向で検討に入った。現行制度は成人した子どもが経済的に自立しないまま親が生活費を負担しているケースも控除対象となっているため「子育ての負担軽減という趣旨から外れる」と判断。
[共同通信:2006年05月22日07時40分]
この人たち、「ニート」っていう言葉を知っているだけで、
ニート関連の本を読んだり
現在なされている支援内容を調べたりはしてないんだろうな。
これ、通ったらそれなりに効果はあると思います。
・家庭内暴力促進
・無理心中(親殺し、子殺し)の促進
・ひきこもり高齢化問題の拡大
などに効果的。
なにゆえ上記の現象に効果的かといえば、
それで働くようになる人がいるとは
(少なくとも大部分のニートが働くようになるとは)思えないからです。
まず1点目、家庭内暴力促進。
「親が養うから子どもが(註、年齢ではなく関係の中での「子ども」です)
ひきこもりやニートなんてものをしていられる」
という意見は正しい。
しかし扶養控除から外せば親が養わなくなるかといえば、そんなことはない。
追い出せる親ならとっくに追い出してます。
生活保護を受けているひきこもり家庭だってあるんですから。
負担がある程度増えても追い出す親はそれほど増えない。
しかし子供を責める言葉は増えるでしょう。
「なぜ働かない」とか「働け」とか「ごくつぶし」とか。
家庭内暴力のあるひきこもりの場合、
暴力のきっかけになるのは家族のなにげない一言が多いそうです。
「同級生の○○さんは就職したらしいよ(なのにオマエはひきこもっている)」
「障害に負けずがんばっている人をみた(オマエは健康なのにがんばっていない)」
などなど。
親が世間話のつもりで話した言葉に、カッコ内の責めを聞いてしまう。
なぜなら常に自分が思っていることだから。
扶養控除がなくなって負担が増えたら、
暴力のきっかけになるセリフが増えてしまうんじゃないだろうか。
もちろん暴力はいけませんよ。
でもとりあえず倫理はおいておいて、暴力をふるうことが何を残すか考えてみましょう。
暴力をふるってすっきりするか?しません。
精神的に疲労して、ますます外に出て働く力をそがれます。
実は子どもは「親を殴ってはいけないが、どうしても殴ってしまう。だから、殴った自分はいけない子だ」と思っているのです。親を殴ることで子どもは罪悪感にさいなまれるのです。だから、子どもが暴力をふるったら逃げなきゃいけないわけです。殴らせてはいけないのです。
西山明 信田さよ子 『家族再生』 小学館
そして2点目。無理心中(親殺し、子殺し)の促進。
上記のように暴力が増えると、中には
「こんな風に育ててしまったのは親の責任。
だから人様にご迷惑をかけないように、責任をもって子供を殺して自分も死ぬ」
なんていう責任を履き違えた親も出てくるでしょう。
あるいは
「親もそろそろ定年なのに自分はいい年をして働いたことも無い。
将来はどうなるのか。自分は親を養うこともできない。
不憫だから親を殺して自分も死のう」
なんていう悲観した子どももでてくるでしょう。
最後に3点目。ひきこもり高齢化問題の拡大。
現在、ひきこもり人口は拡大しつづけています。
なぜなら、支援なしにひきこもりから抜け出すことは難しいからです。
抜け出す人が少ないにもかかわらず、新規参入は増えている。
その上、年をとれば就職も難しくなるけれど、支援は始まったばかりです。
つまり、最初期のひきこもりたちは抜け出せないまま年を重ねているわけです。
30代40代なんてもんじゃありません。
一度も働かないまま年金受給年齢に達するひきこもりが
現れ始める日も近いと言われています。
さて、ひきこもりとニートは違います
(ひきこもりはニートに含まれますが、ニートの全てがひきこもりではありません)が、
働かない(→養われる対象=負担)という点において、行政的には同じでしょう。
このまま月日が流れれば、
現在ひきこもり高齢化問題として語られ始めているのと同じことが、
ニートにもおこるわけです。
つまり、一生働かない人たちの出現です。
働かないから年金は払えません。
でも、親が払っているかもしれない。
生活保護を受けるかもしれない。
結局税金はかかるんです。
親がそこまで面倒を見ない(見られない)としても、
長い間放っておかれたひきこもりが働き始めることは容易ではありません。
働くより餓死を選ぶ、選ばざるをえない。
それがひきこもりです。
(もちろん、そうではない人もいます。
しかし長期に及ぶひきこもりの末に働き出すことは
受け入れ先を探すだけでも大変なことです)
本当に楽観的にニートやってる人って少ないです。
社会性がとぼしいゆえに働けないって調査もでました。
そんな人が働けるようになるために必要なのは、
叱咤ではなく働くために必要なスキル
(対人スキルや生活習慣、一定以上の年齢なら職業的な技能も)です。
「甘やかすからいけない、突き放せば働く」なんて考えは楽観的にすぎます。
受け入れ先や支援者がある状況で、本人を突き放すのは効果的かもしれません。
しかし受け皿もないのに社会からひきこもり家庭を突き放すことは、
「働ける人口を増やす」という点からいえば逆効果です。
ニートのいる家庭にとってだけでなく、社会全体にとっても
「扶養控除対象を減らす(税金の使い道を減らす)」より、
「働ける人口を増やす(納税者を増やす)」ほうが、
長期的にみればメリットが大きいはずです。
⇒サイト内関連リンク
読売新聞調査「ニートの6割、部活未経験」