野村証券のcmをみた。
主人公の若い男性が客にいいプランを提案する。
客「気に入った。いいひとを紹介しよう」
主人公「ってことがあったんです」
先輩「最高の誉め言葉じゃないか」
後日?別の客「気に入った。いいひとを紹介しよう」
とても嫌な気分になった。
嫌、というか。心臓をぎゅっと握られる感じ。
これは私の日常でもありふれた、精神をけずられる光景だから。
このCMで言ってるのが「あなたの仕事ぶりが気に入った、良い客を紹介しよう」なのか「あなたの人間性が気に入った、好い異性を紹介しよう」なのかわからないけど、リアルでそのセリフを聞くときってのはまあ後者だよね。
仕事ぶりと人間性は混同されがちだし切り離せないものではあるけれど、少なくとも後半は客の紹介ならこういう言い回しにはならない。
だから「好い人を紹介しよう」と仮定して。
なんで後者だと嫌なのかっていうと、仕事ではなく人間性への評価にみえるから。
しかも対価が人を選ぶ。
「いい仕事だ!」→「この人に仕事を任せれば安心だ!」→「知り合いにも紹介しよう!」
これはわかる。信頼できる仕事が新規の顧客獲得につながったら嬉しい。
「よい人だ!」→「この人に喜んでほしい!」→「手作りプリンをあげよう!」
これは私なら喜ぶ。でもダイエット中や潔癖症や卵アレルギーで、食べ物を捨てるのは倫理的に耐えがたい人にとっては困ることだろう。
「よい人だ!」→「この人に幸せになってほしい!」→「異性を紹介してあげよう!」
ってなると恋人募集中のヘテロ以外は困るよね。
断りにくいとか感想を言わなきゃとか善意だから全部受け入れなきゃとか思ってしまうと特に精神を消耗する。
善意や感謝なのに合わない人にとって苦痛になってしまうのは、仕事を気に入ったにもかかわらず称賛やご褒美が人間性に対するものにずれちゃってるからだ。
仕事を気に入ったなら、仕事をほめてほしい。
その仕事をした人の人間性じゃなくて。いやそれも嬉しいけれども。
感情労働を感情面で感情的に褒めるのはきっと筋の通ったことではあるけれども。
実際の場面では、プレゼントが趣味じゃないからってヘソを曲げるような大人げないマネはしない。
好感を伝えてくれるのって本当に嬉しいしすごいことだし善意なのはわかってる。
つがわせようとしているわけじゃなくて、「自分の好きなものや自分の思う幸せをあげたい、あなたはそういった良いものに値する」という形で好感を伝えてくれているだけだ。
だから笑顔で受け取りながらひっそり消耗するだけで、客に対してどうこう思うわけじゃない。
ただ、CMでこうも「最高の誉め言葉だ!」ってやられちゃうと、愛されたら愛し返さねばならないのみたいな気持ちになるわけですよ。
ほめられた、うれしい!って喜んで受け入れなきゃいけないって言われてるみたいに感じる。
いい仕事に対する最高の誉め言葉は、仕事内容に満足だって言ってもらうことだと思うよ。